葡萄の植物分類学

  • 植物界被子植物門双子葉植物綱バラ亜綱クロウメモドキ目ブドウ科ブドウ属の果樹です。

  •  葡萄は世界で 10,000種以上存在するといわれ、一番生産されている果物です。

   栽培されている二属


  ブドウ属
 
 ヨーロッパ・ブドウ
 
 中近東が原産であるとされ、ヨーロッパで栽培される種であり、乾燥した気候とアルカリ性の土地に良く育ち、一般に房ごと販売されるのが特徴です。
 
 アメリカ・ブドウ
 
 北アメリカ原産とする種のひとつで、湿気った気候でよく育ち、ヨーロッパ種よりも寒さに強いのが特徴です。

  マスカダイン属
 
 形態や染色体の数等の違いから別の属とされ、マスカダイン、スカッパーノン両種とも北アメリカで自生していた野生の葡萄種で、アメリカ南部の亜熱帯から熱帯の地域で温暖湿潤な気候と酸性の土壌を好み、一般に葡萄を果粒単位で販売されるのが特徴です。


  ちなみに野生種は?
 
 アジア大陸には、中国を中心に約40種の自生している野生の葡萄が確認されており、日本では15種の自生している野生の葡萄が確認されていて、特に「ヤマブドウ」は有名です。

   名の由来

 
 漢の武帝の命により西域(ほぼトルキスタンあたりから地中海沿岸に至る西アジア)に派遣された、張騫(ちょうけん)が「大宛(フェルガナ地方)の人、葡陶を以て酒を為る」と報告したと史記の大宛列伝に記されており、フェルガナ地方(ウズベキスタン共和国の東部からキルギス共和国、タジキスタン共和国に広がる地域)で「プータオ」と呼ばれていたのを報告の際、「葡陶」と記し、やがて葡萄となりました。

葡萄(生)の栄養成分
可食部 100cあたり

(葡萄の種類により多少異なります)
干し葡萄
100c
あたり
  エネルギー    59 kcal  301 kcal
 たんぱく質   0.4 g 2.7 g
 脂質 0.1 g 0.2 g
 炭水化物   15.7 g 80.7 g
 灰分   0.3 g 1.9 g
無 機 質  ナトリウム  1 r 12 r
 カリウム  130 r 740 r
 カルシウム  6 r 65 r
 マグネシウム 6 r 31 r
 リン  15 r 90 r
 鉄  0.1 r 2.3 r
 亜鉛  0.1 r 0.3 r
 銅  0.05 r 0.39 r
 マンガン  0.12 r 0.20 r
ビ   タ   ミ   ン ビタミン A  レチノール - μg - μg
 αカロテン - μg - μg
 βカロテン 21 μg 11 μg
 βクリプトキサンチン - μg - μg
 βカロテン当量 21 μg 11 μg
 レチノール当量 2 μg 1 μg
ビタミン E  αトコフェロール 0.1 r 0.5 r
 βトコフェロール - r - r
 γトコフェロール 0.2 r 0.3 r
 δトコフェロール - r - r
 ビタミンB1(チアミン)  0.04 r 0.12 r
 ビタミンB2(リボフラビン) 0.01 r 0.03 r
 ナイアシン  0.1 r 0.6 r
 ビタミンB6  0.04 r 0.23 r
 葉酸  4 μg 9 μg
 パントテン酸  0.10 r 0.17 r
 ビオチン  0.7μg -μg
 ビタミンC  2 r - r
食物繊維  水溶性食物繊維  0.2 g 1.2 g
 不溶性食物繊維  0.3 g 2.9 g
 食物繊維総量  0.5 g 4.1 g

 文部科学省 日本食品標準成分表 2010
  
 平成22年11月16日報告  参考

   葡萄の特徴的栄養成分


  •  葡萄に含まれるビタミン類は少なく、ミネラル(無機質)は生よりも、干し葡萄(レーズン)になることで凝縮され、各ミネラル分が高まり、特にカリウムが多くなります。
  •  葡萄は昔から薬として利用されてきたすごい成分を含む最強の果実で、葡萄の果皮にはオクタコサノールやポリフェノルの一種であるアントシアニンレスベラトロールを含み、果実にはペンタペプチドを含み、種子にはプロアントシアニジンを含みます。


   カリウム
 
細胞内の浸透圧維持・細胞の活性維持を担っていて、ナトリウムを体外に排出促進させ高血圧動脈硬化を予防、さらに利尿作用を発揮してむくみ予防慢性腎炎等にも効果があります。

   その他


甘味成分としてグルコース・フルクトースを含む
 
 グルコース(ブドウ糖)
 
糖の一種であり、動物や植物が活動するためのエネルギーとなる物質のひとつで、特に脳の通常時のエネルギー源として利用されています。
 
 
 フルクトース(果糖)
 
果実やハチミツなどに含まれる糖の一種で、天然に存在する糖の中では最も甘く、低温で、より甘くなる物質であり、食品や飲料に使用され、体内で消化や分解の過程を経ずにエネルギー化できるため、運動中の低血糖を防ぐ効果疲労回復には有効な即効性のある栄養源です。

 
酸味成分として酒石酸・リンゴ酸を含む
 
 酒石酸
 
酸味のある果実に含まれる有機酸で、特に葡萄に多く含まれており、食品の酸味添加物として使用され疲労回復整腸作用があります。
 
 
 リンゴ酸
 
和名は林檎(りんご)から見つかったことから名付けられた有機酸で、爽快感のある酸味を持つため、飲料や食品の酸味料として使用され疲労回復整腸作用があり、抗アレルギー作用もあることが解りました。
 
※ 葡萄が熟していくと共にリンゴ酸の量は減少します。

   葡萄の果皮に含まれる成分


  •  オクタコサノール(オクタコシルアルコール)
葡萄の果皮に含まれるアルコールの一種で、摂取すると酸素利用が高まり、グリコーゲンを効率的に消費し、エネルギー生産量を増やす働きがあり、運動時における耐久性の向上と運動後の筋肉痛防止筋肉神経性障害の改善体力増進などの効果が確認され、また、コレステロールの減少や抗腫瘍作用も期待されています。

  •  シアニジン
  • さくらんぼ・ブルーベリーなどのベリー類・葡萄・りんご・すももなど赤色液果類の果実皮に多く含まれ、pH3で、pH7-8で、pH11で色に変化する有機化合物の一つで、糖などが結合するとアントシアニン(抗酸化物質)がつくられます。
  • また、シアニジンには抗酸化抗ガン抗炎症作用があり、シアニジンの食事摂取により肥満糖尿病の抑止効果があります。

  •  アントシアニン
ポリフェノール(抗酸化物質)の一種で、植物界において広く存在する果実や花の赤・青・紫を示す水溶性色素です。
 
 
 
アントシアニンの強い抗酸化作用
  • 悪玉コレステロールの生成を抑制し、動脈硬化の発症を抑制します。
  • アレルギー反応に関わる酸素の活性を阻害し、アレルギー伝達物質の遊離を抑制するため、アレルギーに対する効果があります。
  • アレルギーの一種であるアトピー性皮膚炎に対する抑制効果があります。 (2005年)
 
 
アントシアニンの生理作用と効果
  • 網膜のロドプシン再合成作用の活性化と網膜毛細血管の抵抗性を増強させる作用があります。
  • さらに全身の毛細血管保護効果と増強、毛細血管の浸透圧を減少させる効果の増強作用もあります。
  • 白内障の水晶体混濁の原因であるタンパクを防ぐ作用があります。
  • 強い抗酸化作用により過剰な活性酸素の除去と増加を抑制する作用があります。
  • 胃液の分泌を増し潰瘍になりにくくし、ガン細胞増殖に関与する酵素を阻害する抗潰瘍活性があります。
  • コラーゲンに直接作用してコラーゲン基質を強化し、コラーゲン分解酵素を阻害する結合組織の強化作用があります。
以上の作用から眼精疲労網膜症末梢血管病関節炎こりなどに効果があります。 (2000年)

  •  レスベラトロール
 
ポリフェノール(抗酸化物質)の一種で、葡萄がカビや病原菌から果実を守るために自らが作り出す防御物質です。
 
 
 
レスベラトロールの優れた生理作用と効果
  • 血管内皮とその外側にある平滑筋の両方に作用し、血管を拡張させる機能があるため、眼精予防効果血流障害による病気の予防効果があると発表されました。
  • また、レスベラトロールは体内での脂肪の代謝を促進させ、血管拡張反応を改善するため動脈硬化を防ぎ、心臓病予防脳血管障害(脳卒中)予防など心血管関連疾患の予防効果があります。
  • 飢餓やカロリー制限によって活性化するサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子または抗老化遺伝子)が活性化され、DNAの活動を抑制し安定化へと変化させることによりDNAの損傷を防止するため、老化を防ぎ寿命延長(長寿)に作用すると発表されました。
  • さらに、レスベラトロールはサーチュイン遺伝子の活性化によりインスリン感受性を改善し、脂肪の合成や蓄積に関わる酵素を抑制するため、肥満予防糖尿予防にも効果があります。
  • レスベラトロールが胃の知覚神経を刺激し、脳へと伝わり、脳の神経細胞機能を改善し再生するとともに、レスベラトロールの脳内血管拡張作用により情報伝達スピードが向上し、認知症の予防と改善、さらに、アルツハイマー病などの痴呆症の予防効果があると報告されています。
  • レスベラトロールはガン細胞のエネルギー源を標的にし、ガン細胞の活動機能を抑制したり、ガン細胞だけを自然死滅させる作用があり、ガン予防効果だけでなく、ガンの再発予防転移予防にも期待されると報告されています。
  • レスベラトロールはDNA修復とDNA損傷予防効果があり、放射線障害(被爆)の緩和と防御する効果があると発表され、副作用のない放射線防御剤としての研究が進められているそうです。
  • レスベラトロールには、ダイオキシン抑制効果があると厚生労働省研究班により発表されました。
  • レスベラトロールは炎症物質が過剰に働かないように調節する抗炎症作用があり、アレルギー症状の改善と緩和効果があると報告されています。

   葡萄の果肉に含まれる成分


  •  ペンタペプチド
アミノ酸が5つ繋がった物質(YGSRS)で、消化吸収が早く、神経伝達物質と似た構造を持っているため、脳機能の改善効果があります。

   葡萄の種子(グレープシード)に含まれる成分


  •  プロアントシアニジン
 
葡萄の種子に含まれるポリフェノール(抗酸化物質)の一種で、強い渋みを持つ縮合型タンニンであり、最も強力なポリフェノールです。
 
また、葡萄の赤い色素(量か多くなるほど紫黒色へ)はアントシアニンと呼ばれていますが、プロアントシアニジンは赤い色に変化する前の無色の物質です。
 
 
プロアントシアニジンの優れた生理作用と効果
  • 体の器官・関節・血管および筋肉組織をつくる二つの重要なタンパク質エラスチンの伸縮性とコラーゲンの生合成を助けるなど非常に生理活性が高く、血管保護作用があり、静脈瘤慢性静脈不全には世界各国の代替医療現場でも使用され、眩輝夜盲黄斑変性などの網膜障害改善にも効果があり、日本でも医療薬品として使用されています。
  • プロアントシアニジンの強力な抗酸化作用により悪玉コレステロール(LDL)の酸化を抑え、血小板の凝集を正常化し血栓の形成を防ぐため、動脈硬化予防心臓病(虚血性心疾患など)脳血管障害(脳卒中など)のリスクの軽減に効果があります。
  • プロアントシアニジンはビタミンCとともに、活性酸素が細胞を傷つける前に強力に除去する作用があり、染色体の突然変異を防ぐガン予防効果老化防止効果があります。
  • プロアントシアニジンはビタミンCとの相乗効果が著しく高く、メラニン色素をつくる酵素の働きを抑えるため、紫外線による色素斑(しみ)の改善皮膚の老化予防効果があり、更に、むくみの回復を早める効果もあります。
  • プロアントシアニジンは炎症物質が過剰に働かないように抑える抗炎症作用があり、関節炎アレルギー症状(花粉症やアトピーなど)の改善と緩和に効果があります。
  • プロアントシアニジンはタンパク質の保護修復作用も高いことが解りました。

  •  葡萄を種子ごと搾り作られる赤ワインにはプロアントシアニジンが含まれていますが、ワインの種類によりプロアントシアニジンの量が異なります、その中でも渋く重たい味のフルボディにはプロアントシアニジンの量が多く、更に、熟成期間が5年目になるワインが最も抗酸化力があり、熟成期間が長過ぎるとワインの味わいは深くなるものの、抗酸化力は低下してしまいます。
  •  お酒が飲めない方には、葡萄の種子(グレープシード)から取り出され調味料としても使えるグレープシードオイル(目安…大さじ 1杯約15gでワイン1〜2杯と同量)からもプロアントシアニジンを簡単で効果的に摂取できます。